oono yuuki 『TEMPESTAS』レコ発ツアーファイナル2012/09/17@難波ベアーズ覚書

寒くなって気づいて、ずいぶん時間がたってしまったけれど、なんの記録にも残っていないようだしなにか書いておかないとムズムズするのでoono yuuki『TEMPESTAS』レコ発ツアー最終日、難波ベアーズで見聞きしたことを遅ればせながらちょっとメモしておく。
INDIAN NO ECHO SIGN BINE NO!とボーイズヤングが対バンだったので、そちらを目当てにして来たお客さんも多かったと思う。実際2バンドとも大いに盛り上がっていましたよ。ただ、この日のoono yuukiバンドはすごかった! 3年以上oono yuukiの演奏を見てきたけど、一番すごかった! この日はoono yuuki(Gt,Vo)、たかはしようせい(Dr)、フジワラサトシ(Gt)、mmm(Flute)、Alfred Beach Sandal(Key)、新間功人(Ba)という編成。さいしょの音が放たれた瞬間から6人の音色が侵食しあって、うねりとなって迫ってくるし、ときにゲーム・ミュージックを思わせる旋律は裏旋律を伴って軽やかに耳に刺さる。大胆にして繊細、過激にして愛嬌あり。この音楽は、おれにしかわからない、と思いながら陽気に踊っていたが、まわりもみんな踊り狂っていたので、おれほどじゃないにしろ、伝わっていたんだろう。
そもそもoono yuuki(バンド)の楽曲は(『TEMPESTAS』で少しなりをひそめたとはいえ)非常に細やかなつくりで、9人フルメンバーでの演奏時には旋律と裏旋律とさらにその裏旋律くらいまであることもあって、しかしそれを最終的にチャラ、とまではいかなくとも半壊、写実的な絵画を書く横で同じキャンバスにキュビストとグラフィティ・ペインターが同時に製作(でも全員同じ高校)、みたいな感じの仕上がりなのであって(その意味で『生楽器のミニマルなアンサンブルと、エレキギターの轟音が同時に鳴る様子はまるで、部屋の外に追い出された室内楽団が嵐の中でやけくそになって演奏しているようだ』というけったいな売り文句は的を射ているのであるけれども)、基本的にそれぞれが奏でるメロディというものをゆずりあわないまま楽曲が進んでいき(ときにフルート一本でエレキギターシンセサイザーに勝たなくてはならない)、「アンサンブル」などという蝶ネクタイ締めたような言葉では言い表せないような激しい音の合流と分流が繰り返される。この夜のベアーズではさらにその勢いたるやすごいもので、難しいことはなし、ただ身を委ねればぶっ飛ばしてくれる最高のパフォーマンス。oono yuukiをはじめて見た人も多かったと思うがそんなことは一向に関係なく、みな体を大きく揺らし、ときにもみくちゃになり、ときに歌に聞き入り、最後に同世代のボーイズヤングを「ジャンプ要員」としてステージに上げ演奏したThe Undertonesの「Teenage Kicks」で大団円、『TEMPESTAS』レコ発ツアーは終わった。『TEMPEATAS』というのはスワヒリ語で「おしるこ」という意味らしいけど、まさに「おしるこ」のような熱さと繊細さを兼ね備え、いただくとホッとするこの時期ほしくなる音楽になっている………ウソ!! ウソです、「TEMPESTAS」はラテン語「嵐」や「天候」を意味する言葉みたいですね。ボブ・ディラン先輩が思わずパクってしまうくらい、かっちょいいタイトルですね。大野さんは声がすごくいいです。


(写真:田中慎一郎)

TEMPESTAS

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Tempest

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